その目、その声。





――――それから、遊可さんとはまったく会うことなく数年の月日が流れた。


俺は中学3年生の冬を迎えており、受験に向けて日々を勉強に費やしていたある日。



















―――義父さんが、急な病で息をひきとった。




あまりに突然な出来事に、俺は呆然とその事実を受け止めようとしていたが。

当然、そんな容易いものではなかった。



義母さんは通夜、葬式の準備と親戚の人達と忙しそうに動いていたが。その顔からは元気がなく、今にも倒れそうで危うげだった。


一方俺は、頭では分かっていながらも信じることが出来ず。だがどこか冷静な面で少しずつ現実を飲み込んでいっていた。





と。



「…希月?」


背後にある玄関から、誰かが俺の名前を呼ぶ。



その声には聞き覚えがあり、酷く懐かしかった。勢い良く振り返った視線の先にいる女性を見て俺は「嗚呼、やっぱり」と微笑んだ。




「…お帰り、姉さん。」

「…ただいま希月。大きくなったね、なんだか懐かしいわ。」

「俺も、……。」



そこで、俺の視線は姉さんの後ろ。隠れるようにしてこちらを見る一人の少女へと向けられた。