「……希月、希月は、この子をどう思う?」
遊可さんは、自身のお腹を優しくさすりながら俺に問いかけた。
どう答えればいいか、悩んだ俺がチラリと見た遊可さんの顔。そこで、気付いた。
自分のお腹を見る、遊可さんのその瞳はもう一人の母親の目だった。
「…確かに、その子に罪はないと思います。」
「しかし希月…」
「遊可さんの、覚悟次第だと俺は思います。」
俺の言葉に、暫く俯いて黙り込んでいた義父さんだったが。やはり父親として遊可さんが心配なのだろう、認めることはしなかった。
義母さんは、ただ静かにそんな二人の口論を見つめていて。その瞳もやはり、一人の母親の目だった。
そして、
「希月、聞いて。」
「、」
「私はこの子を産むわ。母親として、逃げも隠れもしない。」
「うん…。」
「あの時希月が、味方をしてくれたこと嬉しかった。ありがとう」
遊可さんが家を出る前日、なかなか寝付けなかった俺。それは遊可さんも同じだったのか、彼女が俺の部屋へやって来た。
優しい体温を持つ遊可さんの手が、俺の手を握る。


