その目、その声。





そんな生活が続き、俺自身゙藍野゙が自分の名字だと定着し始めた小学6年の夏。

遊可さんが、家を出た。



藍野の義父さんと大喧嘩をして、飛び出すように出て行ったのだ。

原因は、遊可さんが妊娠したことからだった。



俺より6つ上の遊可さんは、高3だった。

付き合ってる彼氏との間に出来たらしい子供を産むかおろすかの言い合いが、夏休み中ずっと続いていた。


義父さんは元々、頑固な人で。「高校生が何を言ってるんだ」と許すはずがなかった。




が。

そこは義父さんの実の娘だ。遊可さんも頑固で、絶対に譲ろうとしない。



「この子には、何の罪もない。だから簡単に命を棄てさせないし、この子を捨てるなんて私は絶対にしない。」

「ッ―――」



そこに居合わせた俺の鋭く息を呑む音が室内に響き、義父さんと遊可さんが少し気まずそうに視線を泳がせた。


俺、捨てられたから。遊可さんの言葉が重たく胸を圧迫した。