その目、その声。




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「希月、希月ー?」

「…何でしょうか。」

「嫌だ希月、いつまで敬語なんてもの使うつもり?」

「すみません。」



言われても尚、他人行儀な俺に綺麗に整えられた眉毛を微細に寄せながら困ったように息を吐き出す女性を見つめ返す。




――つい先日、俺の名字ば山瀬゙から゙藍野゙へと変わった。

別に両親が離婚した訳でもない、ましてや藍野は母の旧姓でもないから。




単純に、俺は両親から捨てられた。


それも、俺一人だけが。弟の大智は、山瀬として両親の元にいる。俺は、何故か養子として藍野さんという家へと入れられた。



どうしてだ?俺は何も問題なんか起こしてないし、両親に捨てられるようなことをした覚えはこれっぽっちもないのに。


どうして、大智だけ残って俺は追い出された?




頭にあるのは、毎日毎日、そんな答えなんて見つかるはずのない思いばかり。






―――――小学校中学年の、秋。