「(っ……、逃げ、ろ!)」


全ての感情に支配され動かなかった体は、反射的に感じたその強い命令によって希月さんの手を振り払いソファーから逃げ出すように腰を浮かし駆け出す―――――――――…




が。



「どこに行くの、真子。」

「ッア――――!!」



ガシリ、掴まれた襟首の後ろを勢い良く引かれてしまい私の体は再びソファーへ沈む。

背中から落ちた私は、またすぐに逃げ出そうとするがすぐに私の腹を跨ぐようにして希月さんが馬乗りになる。




私を見下ろす、冷淡で恐ろしい無表情の希月さん。

冷たく大きな手が、私の首を掴んだ。片手で押さえつけながら、希月さんはニヤリと笑い。




「何で、逃げるの。」

「冗談っ、止めてよ…!」

「冗談?面白いこと言うね、真子は。」




――――冗談なわけないじゃないか。

――――だって俺は、お前をこんなにも


――――愛しているのだから。






そう言うなり、私の唇に重なる熱いそれ。

奪われた口付けに、私は静かに確信した。




彼から、逃げることなんて出来ないのだということを。