来なければよかった。
目の前には(歪んだ)微笑みを浮かべて私を横目で見下ろす幼なじみと。
それと向き合うようにして、他校の制服を身に纏い頬を桃色に染める女の子。
――…これから何が起こるか。予想は、大体つく。
――――――――――
―――――――…
ほんの数十分前。
すべての授業が終わり、私は荷物を超特急でバッグに詰める。
そう、奴から逃げるのだ。
勢い良く席を立てば、ガタンッと乱雑な音をさせ椅子が倒れてしまった。なんてミス…!
「大丈夫?」
と。
柔らかい声が私の隣から響き、倒れてしまっていた椅子はひょいっと持ち上げられた。
「あ、ありがとう武居くん。」
「どう致しまして。」
お礼を告げれば、彼は声と同じく。柔和な笑みを私に向け片手に持っていた文庫本へと再び視線を戻してしまった。