ゆっくりと開くドアがもどかしく、強引にこちらへ引っ張り開けたドアの向こうには―――…



何時もみたいに、俺を見て睨む気の強そうな幼なじみではなく。

弱々しく、酷く小さく見える真子がいた。




「……ちはや…」

「…、」

「………お母さん、いなくなっちゃった。」

「ッ――――!」

「希月お兄ちゃん、今病院で…」




私、独りになっちゃった。

そう言って、揺れる双眼に俺を映す真子を俺は力強く抱きしめた。



真子の親父が、甲斐性なしなのは知っていた。最近だって、その姿を見たのは一週間以上前だ。

つまり、そんな男を真子が父親だと信頼しているわけがないし。



真子自身、あの人と距離を置いていた。




気が緩んだのか、崩れ落ちるようにして泣く真子の背中を抱きしめたまま撫でてやる。

もう片方の手では、後頭部を撫でる。



真子、お前には俺がいるじゃんか。

独りなんて寂しいこと、言うなよ。