side:千駿
――――過去を変えたいと、幾度となく考えて生きてきた。
中学3年の、秋。受験に向けて勉強をーなんて周りは言っているが。まあ、俺は余裕だ。
そんな時、学校から帰って来、玄関で靴を脱ぐ俺へと母さんが眉根を寄せて駆け寄ってきた。
何だ、と見上げ首を傾げた俺の耳に入ってきた言葉は信じられないものだった。
「さっき真子ちゃんから電話があって、真子ちゃんのお母さんが、亡くなったって…」
「…は?」
「とにかく、真子ちゃんの家に行ってあげた方が…」
母さんの言葉を最後まで聞くことなく、俺は家を飛び出していた。
向かうのは当然、真子の家。息が荒く乱れるのも忘れて、俺はただ走った。
インターホンを鳴らすも、家の中からは物音はおろか人のいる気配すら感じられない。
もう一度、もう一度としつこく鳴らすインターホンの音。
8回ほど鳴らした頃。
ガチャリ、向こう側からドアの鍵が開けられた音がして俺はインターホンを押す指をぴたりと止めた。