母は、きゅっと私の手を握る力を強めた。そして、優しく微笑んで見せた母に私はただ見つめ返すことしか出来ない。
それ以外、どう反応を返せばいいのか分からなかったからだ。
「だから、希月は真子の本当の叔父ではないの。」
「……、」
「…真子は、希月のこと、好き?」
そう私に聞く母の瞳は少し不安げに揺れていて。そんな母に私はやっと微笑んで返すことが出来た。
「好きだよ、本当の叔父じゃなくても希月お兄ちゃんは希月お兄ちゃんだもん。」
「…そう、良かったわ。」
そんな会話を交わして、1ヶ月後。
最近では落ち着いていた母の容態が悪化、そのまま彼女は還らぬ人となってしまった。
御葬式には、父もいた。希月さんはどこか虚ろな瞳で、棺桶の中で静かに眠る母を見つめていた。
私は、声には出さず。
希月さんの隣で、涙を流していた。
そんな私の頭を引き寄せるようにして頭を撫でてくれた、゙本当の兄のような゙彼は――――――――――
…今はもう、いない。


