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「真子、ちょっと、いい?」


病気で床に伏せていた母が小さく掠れる声でそう言い、私を手招いた。



ベッドに横になる母は、もう昔みたいに大口を開けて笑うような元気な姿ではなく。どこか青白い顔、痩せこけた母がもう長くないということは中学生の私には分かっていた。




「どうしたの、お母さん。」

「うん、あのね。希月はどこに行る?」

「希月お兄ちゃんなら、まだ学校だよ。」

「そう、…真子が知らなくてもいいことかもしれないけど。私としては、真子に知っといて欲しいから。」



そう言い、その細く冷たい指の腹で私の頬を撫でた母。

私は静かに頷いて、母の言葉を待った。





この時の私はまだ、希月さんのことを゙希月お兄ちゃん゙と呼んでいた。

優しく面倒見の良い、本当の兄のように接してくれた希月さんが私は大好きだった。