その目、その声。




「さて、案内してもらおうかな?」



にこりと笑い、私の横を通り過ぎて歩く後ろ姿を見つめながら小さく溜め息にも似たものを吐き出した。


希月さんと一緒に居る間は、私自身、無意識の間に気を張っているらしい。これは明らかなる警戒だろう。




案内しろと言っておきながら、スタスタと懇談のある教室まで歩く希月さん。

足取りに戸惑いや躊躇なんてものはなく、絶対に知っている人のそれだ。


なんて腹立たしい男なんだろうか。




1メートルほどの距離を保ちながら、希月さんの背中に着いて行く。

すれ違う生徒がチラチラと希月さんを見ては頬を桃色に染めている。それを冷めた目で見ながら歩いていると。



「まーこー!」

「あ、波…と千駿。」


廊下の奥の角から曲がってきた波と千駿が私に歩み寄ってくる。波は小走りに、千駿はゆっくりとした足取りで気怠そうにこちらへ。



視線が絡まり、一瞬ニヤリと笑いかけられたが。その笑顔も私の隣に立つ彼を見た瞬間に若干強ばった。