それに過剰に反応し肩を跳ね上げ、一歩後退する私を見るなり。彼はそれは愉しそうにクツリと笑った。
自分が綺麗だと自覚している、それをどう生かせばいいのかも分かっている奴の笑みだ。
苛っとしたが、その感情は短く息を吐き出すことで抑え込む。
逸らしていた視線をゆったりと持ち上げ、彼を瞳に映してやれば。満足げに微笑み私へと手を伸ばす。
「ツインテール、兎みたいでいいんじゃない?」
…嗚呼、私の馬鹿野郎。
なんて失態だ。本気で頭を抱えたい。
そうだった。よくよく考えれば、メイド服から制服へと着替えただけでメイクやこの髪型は戻していなかったじゃないか。
この姿で校内を歩いていたなんて、恥ずかしい。ボッと羞恥によって顔を赤くする私のツインテールを指に絡めて弄ぶ彼を緩く睨み上げ。
小さな反抗とばかりに呟く。
「…勘違いしないで下さいよ。」
「んー?何が。」
「クラスの友人に無理矢理されただけですから。」
「でも、忘れて出歩くとこ見ては満更でもなさそうだよね真子ちゃん。」
「…からかわないで―――――希月さん。」
そう名を呼べば、ふ、と持ち上がる口角に眉根を寄せた。


