口元にゆるく笑みを浮かべ続ける山瀬先輩と、眉根を寄せ睨むように彼と対峙する千駿。
私は、千駿の背中に隠れてばかりで山瀬先輩の顔をまじまじと見ることが出来ない。
「敗者だと…?」
「そ。敗者。」
「どこ見てそんなこと言ってんだよカス野郎。」
「いきなり本性現したね澄江くんー。」
怖いなあと肩を竦めて見せる山瀬先輩だが、その顔は千駿の言動にまったく怯まない。
一方千駿は、怯んではいないが酷く苛立ったように舌打ちをした。最早殺人鬼なみの殺気を放ち続けている。
でも確かに、山瀬先輩は千駿の何を知っていて、何を見で敗者゙なんて言ったんだろうか。
千駿は、敗者なんかじゃないし何にも負けてないのに。
すると、山瀬先輩は千駿にと言うよりは背に隠れた私に語りかけるように言の葉を紡いだ。
「希月は、澄江くんにも誰にも真子ちゃんを渡したりはしないよ。」
「…ッ!」
「所詮、籠の鳥は籠の鳥なんだよ?」
嗚呼、何て決定された人生なんだろうか。


