何故、山瀬先輩がここにいるんだろうか。
千駿の背中に隠れながらも、耳だけは2人の会話を聞こうと必死に傾ける。
「ナンデスカ。」
「睨まないでよ澄江くん。文化祭やりにくくなるじゃん。」
「んなことどーでもいーんすけど。」
手厳しいな、と呟きながらも喉奥でクツリクツリと笑みを噛み殺すようにして笑う山瀬先輩はまったく怯んでいない。
言葉も態度もいたって冷静で、自分の中身を一切見せようとはしない。
「お昼に逃げられちゃってさ。まだ話したいことあんだよね、俺。」
「真子に近寄んないでくれます?」
「澄江くん。只の幼なじみは黙っといてくんない?お前は希月には適わないだろ。」
「…何で、そこで希月さんの名前が出てくんだよ。」
それより、何でアンタが希月さんのこと知ってんだよ、と。声からも怪訝さを窺える千駿の問い掛けに、山瀬先輩はまた先程と同じようにして笑った。
「お前は、今のとこ敗者だ。」
その言葉は、どういう意味を持っているの?


