千駿、ねえ、私は希月さんのものなんだよ。
でもでもでもでもでも。私は、籠の鳥にはなにたくないの。
お願い千駿、私を、――――――――…
「あーれれ。梅澤真子ちゃんじゃーん。」
びくり、過剰に跳ね上がる肩。微細にだがカタカタと震え始める体。
隣に座る千駿が荒々しく立ち上がり、殺気にも似た感情を露わにしている。
それさえも愉しげに笑い飛ばして、こちらへと歩み寄ってくる足音に心臓が不規則に鼓動を打つ。
軽い嘔吐感にも襲われるなんて、私はあの数分で相当この人に恐れを抱いていたらしい。
「やま、せ先輩…?」
「お昼ぶりー。」
ひらひらと指の先を振りながら気怠げな足取りでこちらとの距離を詰める山瀬先輩。
と。
私を背中に隠すように、瞬時に千駿が立ちはだかった。
こちらからでは千駿の顔は見えないが、どんな顔をしているのかは大体予想はつく。


