香る控えめな香水の優しいそれに、私の中の何かが激しく揺れた。
千駿は、そんなに私が希月さんに頼ることが嫌なのだろうか。いや、今回は頼っている気はなかったのが真意なのだが。
だって、なんで山瀬先輩が私と希月さんのことを知っているのかとか。
希月さんを゙希月゙と親しげに呼び捨てする、彼の存在を聞けるのは希月さんしかいないから。
「(…あれは、不可抗力みたいなもんだ。)」
電話越しに私を呼ぶ声が「知りたかったら、俺の所においで」と言っているような気がした。
希月さんは思慮深い。たかが高校生の小娘1人を捕らえるのに、わざわざ何年もの時間をかける。
…いや、捕らえるというよりは
完璧に、抜かりなく、裏切りなんてさせない、自分から逃げないように私の心ごど希月゙という人間に縛り付ける。
そうだ、希月さんはそういう人間だ。
だから会う度会う度に言わせるんじゃないか、あの言葉を。
「(…ある意味、一種のマインドコントロールだ。)」


