慌ただしく廊下を駆ける音と、切羽詰まったような声。なんて、タイミングの悪い。
「真子…ッ!!?」
「……ち、はや…?」
バタバタと駆け寄ってくるのは間違いなく千駿で。どうしたのだろうかと小首を傾げれば、勢い良く両肩を掴まれた。
結構力強く、微細に眉根を寄せたがそれはやはり悪魔。無視である。
「何された!?」
「…え、」
「山瀬って野郎に、何かされたんだろ!?」
目を見開き、鬼の形相とも呼べる千駿は私の肩を激しく揺さぶってくる。
最早、されたことを前提に問い詰めてくる千駿の手をやんわりと退かす。
「されて、ない…、」
「嘘だ。」
「…ほんと、されてないから。」
「…俺には言えないことなの?」
ムスリと唇を尖らせ私を睨むように見下ろす千駿。そうだ、言えるわけがない。
だって、山瀬先輩とのことを言ってしまえば。千駿はきっと山瀬先輩だけじゃなく希月さんにも殴りかかる。
コイツは、゙私の身の回り゙には過剰に反応するのだ。


