自分がどうして携帯を取り出したのか、耳に当てたそれの先からコール音4度目で聞こえた声に酷く狼狽えてしまう。
“はい?”
「……あ、」
“どうしたの、真子ちゃん。”
「………………希月さん。」
独白のように呟いた電話の向こうにいる相手の名前。昨日、聞いた振りの声だ。
希月さんは何か面白いものを見つけたように、クスクスと笑い。
“なに、どうしてほしいの?”
「(…゙どうしたの゙じゃなくでどうしてほしいの゙なんだ。)」
希月さんがそんな物言いをするときは、私を見透かしているとき。
過呼吸みたいになる息を必死でいつも通りに戻そうとする私。電話の向こうで、希月さんは囁く。
“ああ、もしかして――――――…”
クスリ、そんな鬱陶しい微笑が共に聞こえた瞬間。


