断じて、好きとかではない。てかそうなることはまずないだろうし。
千駿はニヤリと微笑し、その凄艶な笑みを口元につくったまま。踵を返して行ってしまった。
言い逃げとは、とことん狡い男だ。すかした野郎め。私はその背中をキッと睨みつけていたが、それが負けを意味しているように感じ。
悔しかったから下駄箱を後にした。
――幼なじみ、澄江千駿。
何度も言うが、私はこの男を心の底から嫌悪している。レベルを言うならばエベレスト級だ。
それ位、嫌いなんだ。
と。
ブレザーのポケットでそれが小刻みに振動して、ゆったりとした動作で取り出す。
それは登校中に見た幼なじみとまったく同じ二つ折りの携帯電話。機能性に優れているわけでもなく比較的安く古い機種。


