私の何時もより少しばかり低くなった声色が紡いだ名の主は、やっと後頭部に回していた腕の力を緩めてくれた。
ゆっくりと、千駿の胸から離れた私は視線だけを上へ送る。
視界に映った千駿の顔を見て、私の眉間には深いしわが寄る。
……何で、そんな拗ねたような怒ったような顔してるのよ。
「…何よ。」
「別に?」
「…あっそ。」
「(ムカツク。)」
「……。」
「……。」
「………ッ、だから、何がしたいのよ!!」
喋ることをせずただガン見してくるだけの千駿にそろそろ我慢の限界だった。
意味が分からない、ガン見するだけして最後は馬鹿にしたように嘲笑いやがった…!


