『…。総司…』
「ありがとう…蛍…」
沖田はそう言うとばたりと倒れてしまった。
やがて夜が明けた。
明るくなるにつれ、池田屋の内の様子が
はっきりわかるようになる。
蛍は戦いがどれだけ凄絶だったか
改めて思い知った。
幸い新撰組には死人は出なかったものの
怪我人の数は驚くほどのものだった。
それから数日後。
「蛍。体の調子はどうだ?」
『ん。大丈夫。』
池田屋から帰った後、
土方にはすごく心配された。
毎朝、毎晩聞かれて 少し笑ってしまう。
でもまぁ、うれしい。
池田屋で傷だらけになった体は
もうすっかり治った。
ほかの隊士たちもみんな元気だ。
ただ…一人を除いては…

