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午後1時前。
彼よりひと足早く、子供たちがやってきた。
この時間になると、いつもは過疎感の否めない館内が少しだけ活気に満ちてくる。
うるさくなるというおまけつき、ではあるけれど。
「こんにちは!」
お母さんと手をつないだ子や、抱っこされた子、引きずられた子たちが、私や美咲に笑顔や涙で挨拶をしながらカウンターを通りすぎる。
お母さんたちはといえば、会釈してくださる人もいれば、騒ぐ子供たちを落ち着けるので精一杯な人と、これまた様々。
「……ふう。これで全員みたいね、雛子」
「うん」
今日は、9人の子供たちが集まった。
もちろん、その中にはライバルの杏奈ちゃんの姿もしっかりと確認できる。
「そろそろよ」
美咲の言葉を受け、身体が過敏に反応を示した。
横では、子供たちが今や遅しと彼を待ちながらざわついているけれど、私の心はもっとざわついていた。
秒針のカチカチ刻む音が、やけに耳につく。


