初恋プーサン*甘いね、唇



。・*○*


午後1時前。


彼よりひと足早く、子供たちがやってきた。


この時間になると、いつもは過疎感の否めない館内が少しだけ活気に満ちてくる。


うるさくなるというおまけつき、ではあるけれど。


「こんにちは!」


お母さんと手をつないだ子や、抱っこされた子、引きずられた子たちが、私や美咲に笑顔や涙で挨拶をしながらカウンターを通りすぎる。


お母さんたちはといえば、会釈してくださる人もいれば、騒ぐ子供たちを落ち着けるので精一杯な人と、これまた様々。


「……ふう。これで全員みたいね、雛子」


「うん」


今日は、9人の子供たちが集まった。


もちろん、その中にはライバルの杏奈ちゃんの姿もしっかりと確認できる。


「そろそろよ」


美咲の言葉を受け、身体が過敏に反応を示した。


横では、子供たちが今や遅しと彼を待ちながらざわついているけれど、私の心はもっとざわついていた。


秒針のカチカチ刻む音が、やけに耳につく。