初恋プーサン*甘いね、唇


「お似合いなのね~、ふたりは」


「どうしたのよ、雛子。急に」


「ううん。別に」


彼女の例に当てはめれば、しっかりしていない私にはしっかりした男性が似合うはず。


だとすれば、司さんは二歳年上だし高校を卒業してすぐ海外へ行くほどの人で、今ではボランティアで朗読会まで引き受けているしっかり者だから、相性は抜群。


ベストな組み合わせだと言える。


ただ、実力があっても機会のないスポーツ選手のように、今の私に、相性のよさを活かすだけの勇気がないのが悩みの種だった。


ちょっとしたことなのに、ただひと言なのに、自分から切り出せないもどかしさ。


よくよく考えると、カウンターに隠れて彼を見つめているばかりの私は、彼女の言う通り、水草に隠れる熱帯魚と相違ない。


異性を避け、愛することを望みながらも諦めている今の自分に、ふと大好きなモリー先生からの教訓が蘇ってきた。




『人に触れられるのを嫌う人間がいる。それはおかしい。赤ん坊をみてごらん。触れられ、抱かれ、添い寝をされて安らぐ。多いほどいい。私たちには必要なんだ』