初恋プーサン*甘いね、唇


「さっきの続きなんだけど」


「うん?」


「今日、たずねてみなって」


「誰に?何を?」


「彼に、今の仕事をよ。『今何をしてるんですか?』くらいなら、臆病なカージナルテトラにだって訊けるでしょう」


「前はリコリスなんとかって魚じゃなかったっけ?」


同じよ、と美咲は言う。


「どっちにしても、同じ小型の熱帯魚。コミュニティ・タンクに入れても、水草に隠れるばっかりで、ちっとも自分本来の魅力を出しゃしないんだから」


「ごめんなさいね、隠れるばっかりで」


熱帯魚講座とお説教を同時に受けている気がして、得だか損だか分からない複雑な感じがした。


ただ、美咲なりに私を気遣って背中を押してくれているということだけは伝わってきていた。


彼女流に言えば「手伝っている」という気持ちは。


消極的には積極的。


つくづく、バランスがとれた世界だ。


「大丈夫。いきなり愛してますって言うわけじゃないんだから。世間話をするつもりで、自然にやればいいのよ」


その世間話ができれば、苦労はないんだけれど。


深呼吸をしてみせる美咲に合わせて、私もゆっくり息を吸い、長めに吐いてみた。


「ふう……」