「12時半。カウンターお願いね、片瀬さん」
「あ、はい」
たしかに、そろそろ子供たちがやってくる時間だった。
ただでさえ小さめで静かな街の静かな図書館が、少しだけ賑やかになり、心も騒がしくなる時間だ。
「二ノ宮さんも、あまり片瀬さんをからかわないようにね」
博美さんは私たちの肩に手を置いてから、カウンターと反対側にある館長室へ向かった。
「まったく。マスターといい博美さんといい。あたしは励ましてるだけだっていうのに」
「1パーセントもからかっていない?」
訝しがって問うと、美咲は「そりゃあ」と口を濁した。
「なきにしもあらずだけどさ――」
「やっぱり」
「でも手伝ってるわよ、たくさん」
彼女は両手をバタバタさせて訴える。
「否定はしない」
「もう。素直に肯定しなさいよね、肯定を」
「まあまあ」
軽くいなして笑っていると、美咲は「それより」と話題を変えた。


