「大丈夫……ですか?」 「うん」と言って向き直りながら、彼は柔和な笑みを浮かべた。 「平気だよ」 「はい……」 「ありがとう」 虚をつかれた私に構わず、彼は2度「ありがとう」と繰り返した。 なんの意味か問う隙もなく、私は一呼吸置いて、 「いえ、こちらこそ」 一応そう返しておいた。 「じゃあ」 いつか、と彼。 「えっ」 「またね」 「…………」 私の返事を待たずに彼はきびすを返し、霜が混ざった砂の足音と写真を残して公園を出ていった。 あっけない。 たった10分程度の別れだった。