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11年前。
彼は、放課後に図書館へ通い、なぜだか国内小説の棚を見て回ってから、趣味の一眼レフをバッグから取り出し、町内を歩いて写真を撮るのが日課だった。
街並みはもちろん、人物、空、花、動物。
あらゆるものを撮っては満足げにうなずき、私は時折見える横顔を見て満足げにうなずいていた。
放課後の午後4時前から日暮れまでの時間が、幸せのひとときだった。
彼に一目惚れしたのも、写真に収めている横顔を見たからで、私にとってはこの毎日が実はささやかな記念日でもあった。
しかし。
ひとときという名前通り、終わりは季節をたったひと巡りしただけで、突然やってきた。


