初恋プーサン*甘いね、唇


図書館まで送ってもらった後、市村さんは数え切れないくらいの「すみません」を残して、会社へと行ってしまった。




「はああ……」




彼の車が先の角を曲がったところで、肺の空気を残らず吐き出すようなため息をつき、入り口に寄りかかる。


途中から安心していたつもりでも、無意識の緊張は相当なものだったらしい。


どっと疲れが出てきて、これから家に帰って昼食を作る気力をふりしぼれそうにもなかった。



「お腹空いたなあ……」



つぶやきながら、私はいつの間にか自然に歩き出していた。