初恋プーサン*甘いね、唇


「じゃあ、映画がいいです」


私は、それがベストだと思って答えた。


大好きな映画なら、時間もあっという間に過ぎてくれるだろうし。


何しろデート(とは認めたくないけど、こうして異性とどこかへ出かけること)なんて初めてで。


ずっと緊張しっぱなしの私は、動悸がするほど疲れてしまっていた。


始まって、まだたった数十分しか経っていないというのに。


「いいですね、映画。どんなジャンルが好みですか?」


そんな私の事情は知らないだろう市村さんは、笑顔で話しかけてくる。


なんだか場慣れしている感じがして、安心する一方で、敬遠してしまいそうな自分がいた。


「SF以外なら、なんでも」


本当なら「ソリッド・シチュエーション・ホラー」と言いたいところだったけれど、「ソリッド?」なんて聞き返されたら説明が面倒なので、やめた。


「あ、じゃあ恋愛モノなんかは?」


「嫌いじゃないですよ」


モノによりますけど、という言葉を飲みこむ。


「どんぱちやる、アクションモノは?」


「どんぱちはちょっと……」


大好きです――。


セガールの沈黙シリーズとか、好みの俳優のヴィン・ディーゼルが出ている『ブルドッグ』や『トリプルX』なんかも――という言葉も、喉元でなんとか留める。


「えっと、じゃあサスペンスモノなんかは?」


「好きですよ。『ユージュアル・サスペクツ』が特に」


とうとう、こらえきれなかった……。