「付き合ってる人とか、いるんですか?」
「えっ」
虚をつく質問に、意味もなく胸が鳴った。
家族の話だとか、無難な質問をしていたところで、いきなりストレートにきたから、一瞬、頭がフリーズしてしまったみたい。
「恋人って呼べる人」
「……いえ。いないですよ。呼べる人なんて」
呼びたい人ならひとりだけ、とは言えない。
「そうですか!なるほど」
あからさまに嬉々とした表情から、一縷の希望か可能性を見い出しただろうことが、ありありと分かった。
強引なところはあるけれど、こういう素直に喜ぶところなんかは、嫌いじゃなかった。
私には、到底できそうにもないから。
実際、こんなに消極的な私は、「好きだ」って言い寄ってきてくれる人と結ばれるほうがいいんじゃないかと思うこともある。
生理的に受け付けない人ならまだしも、そうでない人に「好きだ」と言われて、嫌な気はしない。
それに、一生のうちで、相手が私を求めてくるなんて出来事が、何度あるかも定かじゃない。
ため息をつかれるほどの美人でもなければ、湯水のように沸いてくるお金があるわけでもない私だし。


