初恋プーサン*甘いね、唇


休みの日まで図書館に来るなんて、と思いながら、私は約束より10分早く入り口前に到着した。


あいにくの曇り空は、私の嬉しいような、面倒のような、はっきりしない胸の内とよく似ている。


にもかかわらず、普段20分で済む化粧を、今日は40分も使って、マスカラ2倍増しにしたり、いつもはラフにしか引かないアイラインを丁寧に引いたりしたのは、このただのお礼のランチを、デートに近い感覚で受け止めてしまっているから。


白のチュニックに合わせてレギンスを履き、黒いピンヒールのアンクルブーツで整えているのは、どこかで相手に嫌われたくない思いがあるから。


不純は承知で、だけど手を抜いて臨めないところが、自分でも情けなかった。


しかも、こんなふうに待ち合わせをしている姿を、誰かに見られやしないかと考えるだけで、いてもたってもいられないし。


誰かにというのは、もちろん「司さん」のこと。


別に付き合っているわけでもないから、気兼ねは必要ないかもしれないけど。


だからって、片想い中には変わりなく。


その最中に別の誰かとっていうのは、やっぱり背徳感があるし、罪悪感もよぎる。


この姿だけを見て、「いろいろ恋愛してるんだ」って思われでもしたら、大変だし。


一途なことだけが、私のアピールポイントでもあり、自慢なのに。