初恋プーサン*甘いね、唇


でも、来週こそは勝負に出ないと。


そっけない態度にならない自分でいないと。


これほど絶好の機会は、今後そうそうあるわけじゃないだろうし。


いっそ、出し惜しんでいた信号をフタのあいた香水みたいに、鼻が曲がるほどまき散らしてみよう。


彼に誘われたら、間髪をいれずに「はい」と答えよう。


喜んで、なんて付け加えたりして。


ヒヨコの私が、鶏冠をつけるチャンスなんだから。


「そうね。来週こそ頑張ってみる!」


珍しく意欲的に答え、私はストローを指で端に寄せて一気に飲み干した。


「おっ、推進剤注入完了だな」


マスターは目尻のシワを深くしながら大きく笑ったが、美咲は最後の最後で、要らぬ言葉をぼそっとつぶやいた。


「来週もだけど、まずは明日。市村さんとの『お礼と称したデート』よね」