「鋭いね」
「豆を変えたの?」
「ビンゴ。今日はハワイコナって豆を使ったんだ」
「それ知ってる。ハワイのお土産屋でいっぱい売ってたもん」
甘いな、とマスターはかぶりを振った。
「よく売ってるものでも、本物はごく一部。ハワイコナは、ただでさえ生産量が限られた希少品だから、多くはコナっていう名称を使っておきながら、その実、1割程度しか入ってないってカラクリなんだよ」
「そうなの?」
「ああ。しかもしっかりエイジング、つまり長年寝かせたオールドコナっていうものはさらに希少でね。たいていは生産量の少なさゆえに寝かせる時間を惜しんで売るから、当年度産の豆が出回っている実情が見え隠れってわけさ」
「へえ、奥が深いんだ」
美咲はストローに口をつけて喉に通した。
「どうだい?」
「これおいしい!」
「そうだろう、そうだろう。うちのはオールドコナだから、香りとおいしさは太鼓判だからね。ただ――」
マスターは、言葉を切って続けた。
「仕入れが比較的高いってのが玉にきずだけど」


