初恋プーサン*甘いね、唇


これが「片想い特有の現実」ということは、理解している。


けれど、やっぱり物足りなさは感じてしまう。


再会できた事実だけで満足していたつもりが、いつの間にか欲が出ているらしい。


そういえば、よく見る階段から落ちる夢も、現状を良しとしていない不安や自信のなさの表れだと、占いの本で見たような気がする。


まあ、概して確かめる勇気のない自分が悪いだけなんだけれど。


結局、私はそれっきり言葉を紡ぐことができなかった。


無言で散乱した本を棚に戻すだけの行為は、本当に文字通りただのお手伝いさんという状態だった。


なんだか、彼と真正面から向き合えない自分に、今は天国に住んでいる『モリー先生との火曜日』のジャック・レモンから、苦笑交じりの叱責が聞こえてきそうな気がした。