「こ、これって……」
ようやく絞り出した言葉に、彼は「見たまま」と言った。
「念願の、ぼくの城だ」
「これが……」
数ヶ月前から工事をしていた場所が、まさかこんな素敵な、しかも彼のお店になっていたなんて夢にも思わなかった。
これを予想するなら、宝くじの当選金の使い道を考えていたほうがよっぽど現実的だと思うくらいだ。
サプライズ、という単語では片付けられない驚きで、私の胸は乱暴に鳴り始めた。
どうやら私の身体は、悪いショックだけじゃなくて、良いショックにも弱いらしい。
深呼吸をしながら、彼の話を待った。
「本当は、東京で開くのがいいってみんなに言われてたんだけど、そこを蹴ってここにしたんだ。もちろん、利益も考えての立地で計算あってのことだけど」
「計算?」
「ここは人の往来が比較的あるし、安価のチョコを置いて子供でも買えるってイメージとしての敷居を下げれば、集客が望める。幸い図書館の横ということもあって、読んで疲れた身体を甘いもので癒すっていう相乗効果もあるし。最高の場所なんだよね」


