初恋プーサン*甘いね、唇


「こっちへ」


彼は手を引きながら青いブルーシートをめくると、我が物顔で入った。


「え……。ここ、入ったらいけないところですよ?」


彼をたしなめながらも、やんちゃな犬を散歩に連れていった飼い主のように引っ張られ、腰を曲げてシートをくぐった私は、目の前の景色に絶句した。




「…………!?」




「どう?」




彼の言葉にゆっくりとうなずくが、肝心の言葉がなかなか出てこない。


目の前には、完成しきっている一軒のお店がライトアップされて建っていた。


真っ白な外壁に、前面は店内が見渡せるガラス張り。


中央に自動ドアがあり、店内の床は淡い茶色。


ケーキ屋さんのような、軽く湾曲したショーケースが正面にあり、中には整然とひとつひとつ、チョコレートが種類別に並べられていて、鮮やかに彩られている。


左側に目を移すと、そこにはやけに背の低い白い棚の上に籠がいくつかあり、それぞれに色とりどり、形もさまざまなチョコレートが1個ずつ封をされて、たくさん詰めこまれていた。


籠の前には、「お子さん用」という手書きのポップが貼られていて、高級チョコレート店という雰囲気とは違う、親しみやすさも加味されている。


さらに、右側にはハーブティーのコーナーがあり、


――チョコレートと一緒にどうぞ。店長のオリジナルブレンドです――


というポップが飾られていた。