初恋プーサン*甘いね、唇



。・*○*


図書館を閉めて歩道へ出ると、すっかり日が暮れていた。


緩い秋風に揺れるケヤキの葉を、騒がしい子供たちの余韻みたいに感じながら、私はひとつため息をついた。


「あのさ」


彼の言葉に、私はいちいち胸を鳴らした。


いつ言われるのだろう、いつ真実を言われるのだろうと怯えながらも、懸命に気を張って返事をする。


「……はい?」


「この街も変わってるよね、昔とずいぶん」


「あ、はい。信号がついたりコンビにができたり、そこにも何かできるみたいで、工事の音が毎日うるさくって」


心の動揺に気づかれぬよう、精一杯平常心を装って少し歩いた。


そして、図書館の横に立っている看板の前で止まり、コツコツと叩いて建物にかけられた青いビニールシートを見あげた。


「ごめん」


彼が謝った。


なんに対してかの説明もなく。


「え?」


聞こえているのに、ワザと聞き返す。