「慣れれば平気だよ」
「それで、どういう意味なんですか?」
私が聞くと、一呼吸置いてから「それより」と言った。
「早く開けてみて。ぼくが作ったチョコレートだよ」
「あっ、はい」
言われるまま蓋をそっと持ちあげると、フワリとチョコレート独特の甘い香りが広がった。
少しビターっぽい香りもして、それまで宙を漂っていた空気が、高級な空間に様変わりした。
「うわあ、すごい」
箱の中には、3個2列に、ひと口サイズのチョコレートが並んでいた。
どれも形は同じ丸いものだけれど、色や装飾はそれぞれ若干違っていて、見た目にも華やかさを醸し出している。
「食べてみて」
彼に言われて、少しもったいない気持ちもしながら、指でつまんだ。
ベルベットみたいな表面をしていて、ココアパウダーに包まれた上品な色をしている。
「トリュフっていうんだ」
「トリュフ?」
どこをどう見ても、三大珍味には見えないけれど。


