初恋プーサン*甘いね、唇



。・*○*


午後2時を過ぎ、朗読会は無事に終わった。


子供たちは大満足で親のところへ駆けていき、私たちに手を振りながら図書館をあとにする。


静かがモットーの図書館らしからぬ喧騒が去ってから。


彼は、いつも通りカーペットに散乱している残骸の本を片付け始めた。


「雛子、行ってくれば?」


「え?」


美咲は、本を棚に戻している彼を指差した。


「手伝ってきなって。近づくチャンス!」


「……え、でも」


「ここは大丈夫。裏に博美さんだっているし。今のところ落ち着いてるから、任せて」


「う、うん……」


ためらう私をせっつきながら、私の背中を押してスツールから腰を無理やりあげさせる。


「ほら早くっ」


こうして、強引にカウンターから弾き出されてしまった。


仕方なく覚悟を決めた私は、特に乱れてもいない白いブラウスの裾を必要以上に整え、しわを伸ばしながら、乾いた唇の皮を少し歯で噛み、意味もなく唇を舐め、ゆっくりとカーペットの上へ。