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午後2時を過ぎ、朗読会は無事に終わった。
子供たちは大満足で親のところへ駆けていき、私たちに手を振りながら図書館をあとにする。
静かがモットーの図書館らしからぬ喧騒が去ってから。
彼は、いつも通りカーペットに散乱している残骸の本を片付け始めた。
「雛子、行ってくれば?」
「え?」
美咲は、本を棚に戻している彼を指差した。
「手伝ってきなって。近づくチャンス!」
「……え、でも」
「ここは大丈夫。裏に博美さんだっているし。今のところ落ち着いてるから、任せて」
「う、うん……」
ためらう私をせっつきながら、私の背中を押してスツールから腰を無理やりあげさせる。
「ほら早くっ」
こうして、強引にカウンターから弾き出されてしまった。
仕方なく覚悟を決めた私は、特に乱れてもいない白いブラウスの裾を必要以上に整え、しわを伸ばしながら、乾いた唇の皮を少し歯で噛み、意味もなく唇を舐め、ゆっくりとカーペットの上へ。


