ただし、と美咲は付け加えた。
「貸しよ。利率はトイチで」
「何よそれ」
「今までの借りと合わせて、いつかチャクラでの夕食をよろしくってことよ」
「ちゃんと返します」
「あそこの笛吹き男にもよろしくね」
「はいはい」
博美さんと美咲は、満足げにうなずいてから「じゃあ」と帰っていった。
「また明日ね、雛子」
「二ノ宮さん。明日は閉館日よ」
「ああ、そっかそっか。じゃあ雛子、明後日ね」
「うん、コンニチハー」
「ん?」
「ううん。なんでもない。さようなら」
「さようなら」
ふとロワシーの運転手さんを思い出して試しに言ってみたけれど、当然ながら通じなかった。
やっぱり、別れの言葉は「さようなら」がふさわしい。


