「図書館終わるまで待っていてもいいかな?」
「ええ。いいですけど――」
何か?というニュアンスの表情をすると、彼はうなずいた。
「ちょっと話したいことがあってね」
「はい」
了承を確認すると、彼は子供たちに向き直り、いつの間にかただ意味もない騒がしさに変わっていた子供たちの頭を撫でながら、視線を集めた。
そして、みんなが注目したところで、ゆっくりと人差し指を口に当てる。
「シーッ」
神通力が働いているのかと思うほど、途端にざわめきが止んだ。
子供たちは例によって仕草を真似ながら、伝言ゲームのように人差し指を立て口に当て始める。
中には仕草を真似しきれずに、人差し指で鼻を突いて豚みたいな鼻になる子もいた。
「じゃあ、今日は館長とお兄さんで、朗読してあげるからね」
いいですか?と彼が視線を送ると、館長は笑顔でうなずいた。
「もちろん」
「だって。みんな戻るよ」
彼の呼びかけに、子供たちは手をあげながら読み聞かせのスペースに戻っていった。
彼を先頭にして戻る姿に、まるでハーメルンの笛吹き男みたいだねと、美咲と私は顔を見合わせて笑った。


