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突然ごめんなさい。
君は10年前のことを覚えていますか?
当時、君は高校1年生で、ぼくは3年生でした。
当時からショコラティエというものになり、店を構えることが夢だったぼくは、卒業したらパリへ修行に行くことを以前から決めていました。
そして、卒業を間近に控え、渡仏が実現できることになりました。
ただ、嬉しさと同時に心残りだったことがありました。
君のことです。
なぜなら、ぼくは好意を持ち始めていたからです。
いつからか君の視線を知って、ぼくもなんとなく君を気にし始めていました。
けれど、ぼくはとても臆病で。
手先と違って、こういう面では恥ずかしいほど不器用だったので、伝える勇気もなく見つめていました。
もっとも、勇気があっても伝えることはできませんでした。
当時は、携帯電話やインターネットが今ほど発達していない不便な時代だったし。
長い年月会えなくなることが明白なのに告白すると、君を苦しませるだけだと思っていたから。
だから、何も言わないまま行こうと言葉を飲みこんでいましたが、君を毎日目にするたび、どうしてもぼくの気持ちを知って欲しいという気持ちに駆られました。
いけないことだとは思いつつ。
それで、苦肉の策として「被写体になってもらった人へ、写真を渡している」という口実を作り、君に写真を渡すことにしました。
写真の裏に、感謝の想いをメッセージにこめるという形で。
……当時のぼくにできる、それが精一杯の告白でした。


