「手紙?」
理解できず、首をかしげる。
「え、見てくれてないの?」
「手紙……書いてくれたんですか?」
「気づいてないんだね……」
肩を落とす彼を前にして、私は必死に記憶を辿った。
あの日、帰って郵便受けはちゃんと確認した。
そのときはピザの広告とか、いかがわしい金融のチラシしか入っていなかったし。
出発日の朝まで確認したけれど、それらしいものはなかった。
「手紙のようなものは、郵便受けに入ってなかったと思うんですけど……」
「郵便受けじゃないよ」
「えっ?」
「だって、君の住所を知らないし」
意表をつく答えに、私はますます戸惑った。
「じゃあ、どこに……?」
「アレだよ。本に挟んだんだ」
「本?」
「ほら、カウンターにあった本」
「ええっ?でも、この本には何も――」
変なことを言うんだなと思いながら、バッグを開いて持ってきていた本を開くと。
「…………!?」
栞代わりにしている写真と一緒に、見慣れない便箋がたしかに数枚挟まっていた。
――いつの間に、こんな手紙が?


