「Qu`est-ce que vous desirez?」
白い帽子をかぶった男の人が、私に何やらフランス語で話しかけてきた。
恰幅のいい身体を包むように真っ白な服を着て、灰色がかった顎髭をたくわえた強面のおじさんは、見るからにお店の人のようだ。
少しチャクラのマスターと似通った雰囲気がある。
「Qu`est-ce que vous desirez?」
彼は、何かをしきりに言っているけれど、私には理解ができなかった。
見た目でアジア系だと分かりそうなものなのに、わざわざ母国語を駆使してくるあたり、通例かどうかは別として不快そのものだった。
まあ今後、私がもし逆の立場になることがあったときの反面教師にはなるけれど。
そうこう思いながら、困った私はとりあえず挨拶をしてみた。
初対面では、まず挨拶。
これくらいは、万国共通のはず。
「Bonjour(こんにちは)」
満面の――と自分が思っているだけで、実際は引きつっていると思う笑顔で言うと。
話の途中でさえぎったからか、おじさんは虚をつかれたような表情になり、けれど笑顔になった。


