よく「旅の疲れ」とは言うけれど。


「手続きの疲れ」で眠った人間は、世界広しといえど、私ぐらいのものだろうと思う。


帰って両親や祖父母に話したら、きっと偉大なことを成し遂げた人物のような扱いを受けるに違いない。


だって、私の両親も祖父母も、ひとつの県から飛び出したことのない人たちだから……。


こうして、私の抜け殻を乗せた飛行機は弛まず進み、起きたときは離陸から約9時間が過ぎていた。


目覚めからしばらくして、また豪華なミールを輪唱。


結局、リッチを堪能したのは眠りの快適さだけ。


そんな、なんとも罰当たりなフライトは、あっという間に終わった。


この事実は伏せておいたほうがいい……。


手ぐしで髪を梳きながら、私は手鏡の自分と口裏を合わせた――。