「どう思います?」


「聞かなくても分かるでしょう。二ノ宮さんが思ってる気持ちと同じ。1+1より簡単な数式。答えはひとつ」


彼女は笑って言った。


「ですよね」


「そういうこと。片瀬さん、ちょっと待っててね」


博美さんは足早にカウンターを出て行った。


「気持ちは分かった。それだけの勇気が出せたんだから、気持ちは汲む。あとは母さんたちに任せて」


「母さんたち?」


拳を作って、美咲は自分の胸を叩いてみせた。


「アンタは、あたしや博美さんにとって、いつも危なっかしくて、放っておけない子供みたいなものなんだから。仕事仲間であり、友人であり、時に保護者」


「なんだか微妙なんだけど……」


半ば意味不明の説明に戸惑っていると、ほどなくヒールの低いパンプスの足音がして振り返った。


「ダメ。館長はいないみたい。さっき寄贈したい本があるって言ってたから、今は家に戻ってるのかもしれない」


「そうですか……」


落ちこむ私をよそに、言葉を受けた美咲は、すぐさまカウンター横の電話の受話器を取り、どこかへ連絡し始めた。


真意に追いつけない私は、ただ見つめるだけしかできない。


「――あっ、館長。今ちょっといいですか?」


「館長に電話?」


受話器を押さえて、「いいから」と小声で言い、話を続ける。