思わぬ質問に、私は混乱した。
いきなりとんでもないことを言いだしたマスターの真意が分からずに、顔を見やる。
彼は、ものすごく真面目な表情をしていた。
意味は分からなかったけれど、とりあえず想像してみた。
「どうだい?」
「……多分、泣いてしまうと思います。いい人だし、彼のことをもっと知ってみたいと思っていますから。彼といると、すごく安心できるし、心地よく会話ができますし」
「なるほどね」
「それが、何か?」
「いやいや。じゃあさ、ボランティアの彼が死んだら、どうなる?」
言われた瞬間、心臓が暴れかけて、思わず胸をにぎりしめた。
それでも、なんとかマスターの質問に答えようと想像をしてみるけれど、心が拒否してきた。
死、というワードを彼に当てはめることさえできない。
「想像、できませんでした。考えられないっていうか、考えたくないです……」
「だったら、答えは決まりだな」
「え……?」
「雛ちゃんがどうしても失いたくないのは、ボランティアの彼だってことだよ」


