彼と再会したのは、そんな片想いの下火が続いていた矢先だ。
隅に寄せていたはずの想いをすぐに引っ張り出し、私は「いつかまたね」が現実になったことに歓喜した。
大好きな映画の設定と似た状況に、ヒロインに成り代わったとさえ思った。
なのに、彼は私のことを覚えていないみたいだった。
歓喜した分だけ落胆して、忘れているなら私の前に現れないでよと、口にはしないが文句も言った。
それでも周りに支えられ、なんとかしようと決心していた。
なのに、前進しようと思っていた今日、彼と再び離れてしまう事実を知ってしまった。
ただでさえ切り替えの苦手な私が、ああそうですかと簡単にあきらめられるはずもない。
市村さんっていう新しい人も現れていて、彼は私に好意を持ってくれているから、そっちになびけば問題ないのかもしれない。
だけど、どうしても足が踏みだそうとしてくれない。
いい人だと分かっているのに、安心できると分かっているのに。
市村さんのことを想うと、私の中に罪悪感や背徳感がついてくる。
司さん――彼のことを考えてしまうから。
結論を出さないまま、現実逃避しているだけのような気がしてならない。
10年もの間ずっと慕ってきた相手を、裏切っているような。
でも――。
「彼、もうボランティア辞めるのよ。それが、暗に好きじゃないっていうサインじゃないかな」
自嘲気味に笑ってカップに口をつける。
美咲は、ちょっと間を置いてからたずねた。
「彼、どこに行くのか知ってる?」
「ううん」


