「謝らないで。美咲の言うことはいつも正しいから」
「そう、かな」
「うん。勇気を出し損ねた私が悪いだけ。自分でも自分が腹立たしいんだから。はたから見てたら、もっとイライラすると思うし。だから美咲のせいじゃないって。ね?」
「……ありがとう」
美咲は、ようやく眉を元の位置に戻して笑みを浮かべた。
やっぱり、彼女にはこういう笑顔が似つかわしいし、「らしい」と思う。
ふたりしてしみじみの共倒れになると、浮きあがる術がいつまで経っても見つからないから。
「初恋は実らないももだって、きっと。あの博美さんでさえ叶わなかった片想いだもん。チャンスがあるからって、私なんかがあがいても、どうにもならない」
努めて明るく言ったつもりだったけれど、裏腹に鼻の奥が痺れてきて、耳の後ろがぞわっとこそばゆくなった。
指で掻いても、場所が違う気がしておさまらない。
「そう、かなあ?」
美咲は、そう言って話し始めた。


