「ふうっ……」
視線をどことなくたゆたわせていると、大きな水槽が目に留まった。
相変わらず美しい光景だ。
水草がのんびり身体をくねらせ、何種類かの小さな魚が水の森を遊泳している。
流木や石などのオーナメントも丁寧に配置されていて、なるほど彼女が凝っているのもうなずけた。
世話は大変そうだけれど、精神的にリラックスできる効果は多分にあるようだった。
「見事でしょう?」
キッチンのほうから声がする。
「うん」
「最近少し模様替えした、自慢のアクアリウムよ」
「凝ってる気持ちが分かる」
「でしょう?」
うっとり水槽を眺めていると、ほどなく美咲がカップを持って戻ってきた。
「今は60センチだけど、いつかは90センチの水槽にしようと思ってるのよ。はい、どうぞ」
彼女は、水槽に視線を預けつつ底の深いマグを私の前へ置き、テーブルを挟んで向かい側にある、同じ形のソファーへ腰をかけた。
「ありがとう」
「ほら、あの骨まで透けてる魚が、前に言ってたトランスルーセント・グラスキャット」
「ナマズの一種っていうやつね」
「そうそう。で、赤いのがレッドミッキーマウス・プラティーっていう名前の魚よ」
「ミッキーマウス?」